事案の内容
Aさんには兄Bさんがおり、兄の妻C(Aさんからすると義理の姉)さんが事業を営んでいました。Cさんは事業の関係で多額の借金をかかえておりましたが、返済を滞らせたまま、亡くなってしまいました。BさんとCさんの間には子どもがいたので、Cさんの債務はBさんとBC間の子どもたちに相続されることになりました。
その後Bさんが亡くなりましたが、今度はBC間の子どもたちは父親であるBさんの相続を放棄する手続きをとりました。第1順位の相続人全員が放棄したことにより、当時まだ生存していたAさん及びBさんの母親であるMさん(父親FさんはBさんよりも前に亡くなっていました)がBさんの相続人となりました。しかし、高齢であったMさんは、自分が息子Bさん(もとはCさん)の多額の債務を相続していることを十分に理解せず、そのまま放置していました。
そのようななかで、今度はMさんが亡くなり、相続が発生することになりました。AさんはMさんの相続にあたり、Mさんが多額の債務を相続したことになっていることを知り、弁護士事務所を訪ねました。
事案の解決
AさんはCさんが事業を営んでいたことは知っていましたが、多額の借金の存在までは知らされていませんでした。また、CさんとAさんは親戚とはいえ、関係性も薄かったことなどから、Cさんの債務がAさんに相続されることになるなど想像もしていませんでした。Cさんの債権者からAさんに連絡がきたときも、詐欺ではないかと思ったほどです。
しかしながら、今回の件では、AさんはMさんの相続人となっています。AさんはMさんが被ったCさんの債務を相続したくない場合は、Mさんの相続を放棄しなければなりません。相続放棄をすると、債務の負担を免れることができる一方で、積極財産(プラスの財産)についても相続することができなくなります(つまり、いいとこ取りはできず、すべて承継するか、すべて放棄するかの二択になるということです)。Mさんは不動産を所有しており、Aさんはその不動産の承継を希望していたこともあり、相続放棄をすることができませんでした。
そこで、AさんはMさんの相続をすることに決め、(もとはCさんの債務であった)Mさんの債務について、債権者との間で協議することになりました。債権者との間の協議は、双方に弁護士が介入し、最終的には裁判となりましたが、裁判のなかで和解が成立することになりました。債権者側も、今回の事案の特殊性をふまえ、Aさんに本来請求できる金額を減免させることに応じ、和解を成立させることができました。Cさんが返済を滞らせてから、和解が成立するまでに長い年月が経っていたこともあり、元本をはるかに上回る遅延損害金が発生していました。債務の相続の問題については、相続人自身が関与していなかったことであっても、被相続人の行動によって大きな債務に膨れ上がってしまうことがあります。今回は、複数の相続が絡む、複雑な案件でしたが、事業等を営んでいた方が亡くなると、類似の問題が起こることが懸念されます。身の回りに事業を営んでいる方がおり、特にその事業があまりうまくいっていない場合には、相続の際に注意が必要です。相続放棄をするか否かを考えることができる期間は原則3か月と定められていますので、早い段階で法律の専門家にご相談されることをお勧めいたします。

