令和6年5月に成立、公布された「民法等の一部を改正する法律」が令和8年4月1日から施行されます。そのなかで、家族法に関する重要な改正点についてポイントを絞ってご説明したいと思います。ご説明するポイントとしては、大きく分けて6つです。①離婚後の親権に関する見直し、②婚姻中を含めた親権行使に関する規律の整備、③養育費の履行確保に関する見直し、④面会交流に関する規定の見直し、⑤財産分与に関する規定の見直し、⑥その他 にわけられます。この改正のポイントをこれから3回に分けてご説明していきます。
① 離婚後の親権に関する見直し~共同親権~
未成年の子どもがいる夫婦が離婚することになった場合、これまでは夫婦のどちらかが親権者として指定されることになっていました。夫婦の協議で親権者を決めることができない場合には、家庭裁判所などが関与してどちらが親権者として適切かを検討し、決定してきました。
この点について、改正後の法律では「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める」(民法819条1項)、「裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める」(同条2項)とされ、父母双方に親権が認められる制度、いわゆる『共同親権』が設けられました。条文をよく見るとお分かりになると思いますが、この共同親権は決して義務ではなく、両親で合意ができた場合や裁判所が共同にすべきと判断した場合に適用されるものであり、そのような合意や判断がない場合には、これまで通り夫婦どちらかが単独で親権者となることになります。裁判所が判断する場合には、裁判官は共同親権にすべきかどうかについて、「子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない」とされており、特に「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき」やDV案件、「父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき」には共同親権にしてはならないと定めています。
実際に運用されてみないとわからない状況ではありますが、当事者が協議しても共同親権とすることが合意できないような事例で、裁判所が「共同親権とすべき」と判断できるような事例は果たしてどれだけあるのかについては、疑問を感じます。共同親権とすることについて、父母双方の同意が形成できないケースにおいて、共同親権となる可能性は非常に低いのではないかと感じるところです。
なお、親権者については一度定めたとしても変更することが可能です。その場合には、家庭裁判所において親権者変更の手続きを行っていただくことになりますが、裁判所が親権者の変更を認めるかどうかを判断するにあたっては、協議の経過を考慮することが今回の改正で明示されました。たとえば、親権者変更について応じたくない側が、協議を正当な理由なく拒んでいたような場合には、そのことが不利に考慮される可能性が高くなります。実際の結論にどこまで影響するかはわかりませんが、明文化されたという点では一定の意味をもつものと思われます。
② 婚姻中を含めた親権行使に関する規律を整備
夫婦が婚姻している間は、子どもに関する親権の行使は共同で行うことになります。しかし、実際には子どもの親権を行使する場面において、夫婦二人での行使が難しい場合もあるかと思います。そのような場合に例外的に親権を単独で行使することができるという条文が定められました。
例外的に親権を単独で行使することができる場合としては、「子の利益のため急迫の事情があるとき」(民法824条の2第1項3号)が定められました。これはたとえば、子どもの緊急の医療行為に関することや、DVを受けているような場合、子どもが虐待を受けているような場合が該当すると考えられます。また、「監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使」(民法824条の2第2項)についても単独で行使することが認められています。該当する行為としては、子どもの身の回りの世話などに関する行為が考えられます。
また、親権の行使に関する紛争が発生した場合には、裁判所において親権の行使を父母どちらか一方にして指定することができる制度が定められ、父母の意見対立を調整するための裁判手続きが整備されています(同法824条の2第3項)。
なお、同法818条は「親権は、成年に達しない子について、その子の利益のために行使しなければならない」(同条1項)と定めており、旧規定の「成年に達しない子は、父母の親権に服する」に比べ、「子の利益のために」という点が強調されています。夫婦の親権行使の場面においては、ともすると父母の感情的対立が前面に出てしまい、子どもの利益という点がおきざりにされてしまっているケースも散見されるところです。このようなことがないように、親権は子どものためであるという当然のことを改めて明文化したものであり、子を持つ親としてはこの意味を重く受け止めなければならないといえるでしょう。
来月は、面会交流と財産分与に関する規定の見直しについてご説明をしていく予定です。

