
相続人全員が相続放棄するなど相続人が誰もいない場合、残された不動産はどうなるのか?お墓はどうなる?
身寄りのまったくない方や相続人はいても全員が相続放棄をした場合、その被相続人の財産はどのようになるのかという疑問です。
通常、相続人は被相続人の配偶者のほかに子どもが相続人となりますが、その全員が相続放棄をすると被相続人の父母等が相続人となり、その父母も相続放棄をすると被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。その兄弟姉妹が相続放棄をすると相続人が存在しないことになります。
このような場合、被相続人が残した財産は行き場を失ってしまうことになりかねないので、被相続人の利害関係人(例えば、被相続人の債権者など)によって相続財産清算人を家庭裁判所に選任してもらいます。
相続財産清算人は被相続人に対する債権等の申出をしてもらう手続を行い、申出があって債権の存在が確認できれば、相続財産の中からその支払いをすることになります。この段階で相続財産がなくなってしまえば相続手続は終了しますが、財産が残れば、これを特別縁故者(被相続人の生前中に親しくしていた方など)か国庫に帰属させることになります。
特別縁故者が相続財産の分与を希望する場合には家庭裁判所に相続財産分与の申立をして認められる必要がありますが、特別縁故者も存在しない場合には、相続財産清算人は相続財産を国庫に帰属させることになります。
以上は、被相続人が遺言を残していなかった場合に想定される手続ですが、被相続人が生前中に自分の財産を特定の人に継がせたいと考えて遺言書を作成しておけばその遺言書に則って相続財産を引き継がれることになります。したがって、もし、身寄りのない方が自分の財産を特定の方に引き継がせたい場合には遺言書を作成することをお勧めします。
他方、被相続人が残したお墓はどうなるでしょうか。実は、お墓は財産相続の対象にはなりません。お墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰する者に承継されることになっています。このため、被相続人の相続財産について相続放棄をしても、お墓だけを承継するというケースもあり得ます。